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5. 回転半径に対応する各種プロットの直線領域の見積もり

始めに

希薄溶液を測定するとします.回転半径 Rg と散乱強度 I(q) との間には,

I(q) = I(0) [1 − (1/3)Rg2q2 + ……]  (5.1)

の関係があります.ここで q は散乱ベクトルの大きさです.この式は,q の小さいところでの I(q) の変化から Rg が求まることを示しています.ただし,I(q) を q2 に対してプロットしたグラフは直線性が悪いため,解析に使われることはほぼありません.

直線性を改善したプロットとして,

Guiner プロット

ln I(q) = ln I(0) − (1/3)Rg2q2 + ……  (5.2)

Zimm プロット

I(q)−1 = I(0)−1 [1 + (1/3)Rg2q2 + ……]  (5.3)

Berry プロット

I(q)−1/2 = I(0)−1/2 [1 + (1/6)Rg2q2 + ……]  (5.4)

が提案されてきました.現在では,想定される散乱体の形状に合わせて,直線領域の長いプロットを用いることが慣例となっています.例えば,散乱体が球に近い場合は Guiner プロット,散乱体が線状高分子の場合は Berry プロットを通常選択します.詳しくは文献[1]を参照してください.

[1] 柴山充弘,佐藤尚弘,岩井俊昭,木村康之「光散乱法の基礎と応用」講談社(2014)

Rgに対応する直線領域の見積もり

式(5.2)–(5.4)は, 原理的には q2 の項が 1 に比べて十分小さいときに成り立つ式です.実際に,散乱体の形状に合わせて最も直線領域の長いプロットを選んだとしても,プロットの直線領域の上限は Rg2q2 ≈ 3 〜 6 程度になります.つまり,

q = 31/2 / Rg  (5.5)

または,

q = 61/2 / Rg  (5.6)

を計算することで,Rgに対応する直線領域の上限の q を見積もることができます.これを計算するには,次のように操作します.

(1)下滑尺をドラッグして,∝1/q 尺の √3 または √6 を,q 尺の 1 に合わせた状態にします.

(2)∝1/q 尺が Rg を表しているとして見ます.∝1/q 尺の目盛りに対面する q 尺の値が,式(5.5)または式(5.6)から計算される,直線領域の上限の q の値です.