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9. MAXS および WAXD についての計算

始めに

小角 X 線散乱よりも広角側の測定を,中角 X 線散乱(MAXS)と呼ぶことがあります.ここでは,散乱角度 θ が概ね 5 より領域で,検出器上でのビーム中心からの距離 xθ,および散乱ベクトルの大きさ q の対応を正しく計算する方法を解説します.SAXS「2. SAXS(SANS)についての計算」において, x,カメラ長(試料―検出器間距離)L,および θ の間には以下の関係があることを書きました.

tan θ = x / L   (9.1)

また, q,媒質中での波長 λ,および θ の関係が以下ようになることを述べました.

q = 4 π sin (θ / 2) / λ   (9.2)

θ が小さい場合には,

θ ≈ tan θ ≈ 2 sin(θ/2)   (9.3)

となるため,tan θ を表す θ [T] 尺と 2 sin(θ/2) を表す θ [S] 尺の目盛りは同じですが,θ = 5 を過ぎたあたりから,両者の目盛りがずれていきます.このような領域での計算を行うには,以下のように操作します.

MAXS の計算を行う方法

(1)カメラ長 L と波長 λ を設定します.

(2)x 尺上で,目的とする x の値にカーソルを合わせます.

(3)θ [T] 尺上で,カーソルの指している目盛りを読みます.これが x に対応する θ の値です.

(4)θ [T] 尺上で,求めた θ の値を覚えるか記録しておき,θ [S] 尺上で,同じ値の目盛りを探して,その目盛りまでカーソルを移動します.

(5)q 尺上で,カーソルの指している目盛りを読みます.これが θ に対応する q の値です.

広角 X 線回折(WAXD)の計算

Lλ を設定したら,SLS のときと同様に,θ [S] 尺上で目的の角度 θ を探してください.q 尺に,θ に対応する q の値が表示されています. WAXD では,散乱角を 2 θ と定義する習慣があります.この計算尺における散乱角は,あくまでもθ ですので,θ の定義を間違えないように注意する必要があります.